ライトが風邪を引いた。






a high fever








今日は土曜日。一日中捜査本部で過ごす予定の夜神ライトが現れないので、Lはそわそわしていた。
午前中のおやつタイムの前に父の総一郎から電話があり、高熱のため今日は家で休ませると言う。
気落ちしたLはその日、ケーキをいくつもやけ食いし、捜査本部メンバーの目を丸くさせた。








「ライト お友達がお見舞いにいらしたんだけど・・・」
「ん・・・・・・」

ライトはまだ熱のこもる体でベッドの上、寝転んだまま来訪者を迎えた。
母親の後ろから現れたのは、猫背のいつも同じ服を着ている男。

「さきほど話したように どうぞお構いなく」
「わかりました ライト 薬置いておくわね」
「うん・・・」

薬と水を置いて、ほとんど残した夕飯を持ってライトの母・幸子は階段を下りていった。
流河は珍しく手ぶらではなく、手提げ袋を持っている。
ベッドへ一直線に歩いて来た男はライトの顔をじっと見つめた。

「りゅぅ・が・・・何の・・用だ」
「お見舞いです 熱はまだ下がってないみたいですね」
「ああ・・・」
「差し入れを持って来ました」

流河の袋から取り出されたのは、ペットボトル入り清涼飲料水とケーキの箱。

「それ 食べられないぞ・・」
「ケーキは私の分です 夜神君はプリンをどうぞ」
「どうも・・・後で食べるよ」
「それからこれはストロー付きなので飲みやすいと思います」
「・・・気が利くな」

水分を摂って汗を掻いて熱を下げ、僕は早く回復しなければならない。
差し入れをベッドの傍らに置いた男にライトはほんの少し感謝した。

「食事 あまり摂れてないようですが・・・」
「まだ食欲が無くてね」
「熱冷ましによく効く薬を持って来ました」
「薬ならあるから・・・」
「飲み薬よりは絶対にこれの方が良いです」
「ふ〜ん」
「・・・信用してませんね」
「ん? そんなことないさ」
「ではこの薬を試してください 私が手伝いますから」
「別に手伝う必要ないだろ・・?」
「自分で入れられますか?」
「入れる?どこに?」
「肛門です これ座薬ですから」
「ならいらない・・母が置いた薬があるから」

水で満たされたコップの隣りにあった薬を、流河は摘んでベッドから対角にある部屋の隅へ放った。

「なっ・・・」
「薬はこれしかありません」
「流河が投げたからだろ 拾ってこい」
「私は知りません 自分で探してください」

体を起こすのも辛いライトが、移動して薬を取りに行くのは無理だと分かっていて流河は言う。
ライトは熱で潤んだ瞳で流河を睨んだ。
その視線を受けて、萎縮するどころか興奮する男がいるとは思いもよらない。

「流河は見舞いに来たんじゃなかったのか」
「お見舞いも兼ねて夜神君を介抱します」
「もういいよ 帰ってくれ・・・一人の方がましだ」
「・・・薬を入れるまでここを動きません」
「勘弁してくれ 僕は病人だぞ・・」
「だから治すための薬は必要不可欠でしょう」

引き下がりそうも無い流河が鬱陶しくなってくる。
ライトは相手をしていられないとばかりに、流河に背を向けるべく体の向きを変えた。
横向きになると額の濡れタオルがずれたが、既に温くなったそれはあってもなくても同じだった。
部屋が沈黙で満たされる。
ライトの向いた側のベッド脇では、リュークが頬づえをついて座りこんでいた。

「夜神君」
「・・・・・」
「夜神君!」
「うるさい」
「!」

振り向かないライトに焦れた流河の呼びかけは風邪っぴきに一蹴された。
自分を幼稚だと自覚している男が黙って見過ごせるわけもなく。
流河はライトの布団を取り去り、素早く下着ごとジャージをずり下ろして尻をあらわにした。
鈍い頭で何が起きたのか認識する間もなく、流河はライトの汗ばんだ首筋に顔を埋め、尻の狭間に触れてきた。

「りゅ・が・・よせ・・・!」
「・・・・・・」
「りゅう・が・・・」
「・・・・・・・・」

さっきのお返しに、今度は沈黙を保つ男はライトの首筋の汗を舐めあげ、指を孔の中へと進めようとした。
背後から捕らえられてはろくな抵抗も出来ず、ライトは口元を歪めた。
頭の中で思いつく限りの言葉で流河を罵倒する。
乾いた指の侵入を拒絶する孔に業を煮やした流河は自分の空いていた右手を口に含み唾液を絡ませた。
体をずらそうと蠢いたライトの左肩を上から押さえつけ、潤った指で中への侵入を果たす。

「くっ・・・・」

初めのうちこそ驚いていたソコは徐々に慣らされ、出入りする指に順応する。
解れてきたのを見計らって流河は用意していた座薬を挿しこんだ。

「なに・・・・」
「薬を入れました」
「もう・・充分だろうっ・・・」
「いえ 指ではちゃんと奥まで届きません」
「!?」

刹那、ライトの思い描いた『まさか』は現実のものとなった。

「―――――――――っぐぅっ!!」

おざなりに拡げられた孔に男の凶器が穿たれた。
熱に侵された体は崩れ、流河の腕に抱えられた腰だけを突き出した格好でライトは男の欲望を受け入れさせられた。

「うっ・・あっ・・・はっ・・・んっ」

普段は抑えている声を制御できず、ライトは流河の動きに合わせて垂れ流した。
と、後ろから突いてきていた男が止まり、ライトの体を回した。
繋がったまま仰向けにされた衝撃で呻き声が漏れるのを、流河の唇が塞いだ。
ライトの放った声は流河に吸い込まれ、足を開かされて揺さぶられる。
薬を先頭にした初めての感覚に震えながら鈍い体を持て余し、後はひたすら男が早く動きを止めることだけを祈った。











ぐにゃりとしたライトの体を清めた流河は証拠隠滅のために片付け始めた。
訪れる前と変わらない状態に整える。
予想外の運動で疲れ切ったライトは、体を投げ出して指一本動かすまいと意地になって固まっている。
衣服を着せ、布団を掛け、濡れタオルを冷やして流河は病人の額にのせた。
冷たさに、ライトの睫毛がピクリと揺れた。

「無理をさせてしまってすみません」
「なら・・・始めからするな」
「・・薬がそろそろ効いてくるはずです 次に起きたときには熱も下がるでしょう」
「ん・・・・」

言われたとおり、薬の作用かライトは急激な睡魔におそわれた。
伏せていた瞼が重くなり、薄れゆく意識の中で、ライトは自分の名を呼び続ける流河の声を遠くから聞いた。






「夜神君 夜神君 ・・・ライト・・」

どこか切ない響きのそれは、本人ではなくリンゴ好きの死神がちゃっかり聞いていた。
しばらく寝顔を見つめた後、Lは静かに手提げ袋を提げて立ち去った。





『なんでこいつ 本人が寝てる時にだけライトって呼んでるんだ? 人間って分かんねー』





04.06.19