a foolish man
キラ事件捜査本部に入って数日が経った。
メンバーはLこと流河、僕の父、その他3人の刑事とワタリと名乗る老人。
そして僕、の計7名。
捜査本部の刑事はどんな奴がいるのかと不安もあったが、杞憂に終わった。
流河以外のメンバーはキラの引き起こした行動を単純に受け取るだけで、的確な推理をしているのは流河のみ。
使えない部下を動かしている流河は、僕の言葉には食い付き目を光らせてくる。
スリルもあるが僕の推理を認められ推論を交わすことで、僕は高揚感を味わった。
しかし、毎日のように続くとさすがに精神が疲弊する。
流河が呼ばれて席を立ったとき、我知らず溜め息が漏れた。
「お疲れのようだな」
「いえ まだ大丈夫です」
流河が居なくなって一息つけると思ったのに、特徴的な髪型の使えない刑事その1が寄ってきた。
内心バカにしているのを微塵も感じさせない笑顔で僕は答える。
「まあそう言うな ほらあんたの分」
「すみません いただきます」
カップに入れられた紅茶は湯気を立てていて熱そうだった。
少し冷まして口をつける。
紅褐色の液体が、コーヒーばかりで弱っている胃に滲みこむ。
「それにしてもすごいな あの竜崎と対等に渡り合うなんて」
「僕は推理するのが趣味みたいなものですから それが今回役立っているだけです」
「謙遜するな」
「・・・捜査本部の皆さんは命懸けで捜査に当たっているのに僕なんて まだまだですよ」
心にも無いセリフを並べるのは得意だ。
僕の演技を見破った人間は未だかつて一人もいない。
「・・・そうなのか・・・?」
「なにか?」
「いや あんまり根詰めて無理はするなよ」
「はい」
心配されているようだが、僕は自己管理には自信がある。
捜査本部で過ごすプレッシャーは相当なものだがこれしきの事でへこたれるほど、僕は弱くない。
紅茶を飲みながら手元にある資料に目を通す。
リュークはというと、僕が座るソファとテーブルの間にこじんまりと座っている。
捜査員が常駐するホテルの一室にいてはリンゴをやるわけにもいかず、我慢させている。
扉が勢いよく音を立てて開き、
「大変ですっ キラがまた動き出しました!!」
入ってきた流河と父が切羽詰った顔で姿を現した。
「何があったんだ!?」
僕も合わせて、勢いよく立ち上がる。
と、一気に頭から熱が抜けていく感覚を認識した僕の目の前は、急激に暗く閉ざされた。
「ん・・・・」
目を開けると、見慣れない天井が視界に広がった。
状況がいまいち把握出来ない。
「お 目ぇ覚めたか」
「・・・相沢さん」
「あんた倒れたんだよ 起立性低血圧じゃないかって話だ 一時間くらい眠ってたぞ」
「大丈夫です それよりキラはっ!キラがどうしたんです?」
「落ち着け 流河と局長、松田が当たってる 今日はもう休め」
「僕は平気ですよ 少し寝て頭もすっきりしています」
「・・・・笑うな」
「はい?」
「そんなウソ臭い笑い方すんな」
「!?」
僕のにせ笑いを見抜かれたのか。
しかしなんで、こんな単純バカな刑事なんかに・・・。
「あんた 自分で思ってる以上に疲れてるんだ 休むのも仕事のうちだと思え」
「分かったようなこと言わないでください 僕が平気だと言ってるんです!」
「今のあんたに加わられても邪魔なだけだ」
「・・・・・・」
僕が邪魔だって、こいつ本気で言ってるのか。
情報をもとに推理するには、使えない刑事達より僕がいた方が遥かに効率はいいはずだ。
思わず、でかっ鼻男をきつく睨みつける。
「疲れたときはどうすればいいか・・・知ってるか?」
「何ですか 急に」
「オレが教えてやるよ・・・・ここを・・」
僕の横たわるベッドに乗り上げてきた相沢は、中心をぐっと掴んできた。
「どこ触って・・・手 離してください!」
「いいからオレに任せろ」
「イヤですっ」
まだダルさの残る体を必死で捩り抵抗するが、男の手は外れない。
ソコから手を退かそうと腕を掴んだが振り払われ、逆に両腕を押さえられる。
男は膝の上辺りに乗っかり、僕の前を弄りだした。
「こういう時は抜いた方がいいんだっ」
「どうしてあなたに・・・! 止めてください」
「そうか? ここは反応してるぜ」
前をくつろげて下着をずらした手が直接、僕の性器を扱き上げる。
自分でもあまり触れないソコは、他人の手、他人のリズムで擦られて簡単に成長した。
「くっ・・・・もう・・・・・いいですからっ」
「最後まで見せろ」
腕を捕られて顔を隠すことも出来ず、僕は顔を俯けて首を振る。
一方的に追い上げられる感覚に慄きながら内心で一生懸命、反発する。
顔を覗き込む男を、至近距離で睨みつけてやる。
「いい顔だな」
「!? な・に・・・言ってっ」
「愛想笑いよりもこっちの方が断然いい」
「はっ・・・・」
真っ直ぐな眼が僕の内を見透かすようにじっと見つめてくる。
誤魔化しの利かない、澄んだ瞳だ。
僕は負けじと睨み続ける。
這い上がる快感の波に抗おうとするが、背筋に震えが走った。
「はな・せ・・――――――――っんっ!!」
達した瞬間、僕は眼を瞑ってしまった。
他人の手で果て、余韻で体がヒクリと揺れる。
みっともない姿を見られた。
しかも、見下していた男の手で達して・・・恥ずかしさと惨めな気持ちで一杯になる。
初めて味わう感情の渦に呑まれている間に男が再び動き出した。
「なんで・・・脱がすんです?」
「オレもその気になった ほら」
相沢は自身を取り出し、太く膨れ上がったソレを見せてきた。
しかし何故、僕を裸にするのか意味が理解できない。
さきほどまで相沢に力ずくで抑えられていた両腕は痺れて、しばらくは自由になりそうもない。
これ以上何かするなら・・・
「父はっどこにいるんです? 僕が刑事局長の息子だとお忘れなんですか!」
「この部屋は竜崎がキープしてた部屋で捜査本部は二つ隣の部屋だ 局長には・・・言っても構わないが・・・」
「それなりの覚悟があってこんな行為に及んだとでも?」
「いや全く あんた言えないだろー父親に 男の手でイカされた なんて」
「!!」
考え無しの直情型男に分かったように言われるのは腹が立って仕方ない。
それが当たっているだけに、余計に腹も立つ。
僕は相沢を糾弾する言葉を失った。
裸に剥かれ、肌を弄られる。
脱力した足を開かされ、臀部にある孔に何か塗りこめられる。
「そんな場所を弄って・・・どうするつもりですか!?」
「言ったら暴れるから教えねー」
「暴れるようなことをする ということですね」
「あんたは寝転がってればいい」
なんて自己中心的なヤツなんだっ。
臀部に違和感を感じて、僕は暴れてやった。
腕がうまく動かせないため、足で相沢の腹を狙うが命中しない。
それでもいまいち力の入らない足を蹴り出していると男に膝裏を掴まれ、強引に開かされた。
この年になっておしめを交換するポーズをとらされ、屈辱で歯をぎりぎりと鳴らす。
「相沢さん いい加減にしてください こんな格好・・・」
「素敵な格好だろ」
「イヤです!・・・みっともないっ」
「どんなんでもオレには見せろ あんたの全部が見たい」
「ははっ それは無理ですよ・・・・・うっ!」
足と足の狭間に強烈な圧迫感を感じ、僕は呻いた。
排出する器官に何か太いものが入ってくる。
痛みと未知への恐怖から汗が噴き出す。
まさか・・・閃いて男の顔を見ると苦痛に歪んでいた。
「ぬ・・いて・・・くださ・・」
「無茶言うな いいか 大きく息を吐け」
「・・・・・・」
こいつの指図を聞いてたまるもんかと、僕は歯を食いしばる。
目を細めて視線を当ても無く彷徨わせると、天井に張り付いたリュークが真上から観察していた。
ずっと見られていた?・・・衝撃で息が詰まる。
天井は視界に入れないようにしないと。
落ち着きが無くなって不審がられる前に、ゆっくり息を吐く。
「―――――――っ!?」
「息を止めるな 中が傷付くぞ」
傷付けている張本人がアドバイスを寄越す。
矛盾したやり取り。
初めて入ってきた男の圧迫感と痛みは、僕を臆病にする。
ゆっくり呼吸を繰り返し、これ以上痛みが増幅しないようにとそればかりに頭が囚われる。
相沢は力を失った僕の中心を宥めるように触れ、目元に唇を寄せてきた。
水滴を舐め取られ、目に涙が浮かんでいたことに気付く。
生理的に流れ出した涙だが、泣き顔をこいつに晒してしまった。
そもそもこんな状況に陥ってしまった経緯を思い出そうとするが、男が動き出して、僕の思考は中断された。
男が達した後、僕の体は悲鳴を上げて力尽きた。
今日だけでなくしばらく休養をとることになるかもしれない。
僕にはそんな時間も余裕も無いのに、バカな男のせいでこのザマだ。
相沢は僕の腹に放った残滓を適当にシーツで拭き取ると、弱った僕を抱き締めてきた。
「悪かったな」
「あなたにも反省する頭はあったんですね」
「厳しいな・・・」
「自分のしたことをよく考えてくださいっ!」
相手にするのも億劫だが言わずにはいられなかった。
しばし考え込んだ男は僕の顎を取り、目を合わせた。
「オレは・・・あんたに 夜神月に惚れたみたいだ」
「僕は相沢さんが嫌いです」
男の告白を斬り落とす。
僕の返答に怯んだ男の目を、見下ろしてやる。
優越感に浸っていると、男は不意に僕の唇に唇を押し付けてきた。
「んんっ」
「・・・・・・」
抵抗しかけたが、これで最後だと体の力を抜く。
男の荒々しい口付けが終わったとき、僕はとどめを刺すべく言葉を音にした。
「これで僕のことは諦めてください 仕事仲間に好かれても煩わしいし 迷惑です」
「あんた・・・」
「どうしました? 相沢さん」
「オレは諦めないからなっ!! それから・・・大人を馬鹿にするな!」
「・・・もういいでしょう 一人になりたいんです」
「局長にはオレから適当に説明しておく ゆっくり休め」
「言い訳は無理のないものにしてください では」
「ああ これからも宜しく」
「・・・・・・・」
扉が閉まるのを見届けて、僕はようやく一人になった。
正確には一人と一匹、か。
『クククッ 大変な目に遭ってたな』
「散々だ あんな単純バカ刑事とこれからも顔を合わせなくちゃいけないなんて・・・」
『あのアフロの奴 お前の演技見破ってたな』
「まあね でもまあ近づかなければ済むことさ」
『あいつの方が近づいて来るんじゃないか?』
「・・・今は何も考えたくない 寝る」
『・・・・・・・・・・』
何がいけなかったんだろう。
たぶんあの眼だ。
相沢の眼は危険な気がする。
僕の演技を暴いたように、僕のすべてを暴いてしまいそうで、正直怖い。
これまでに無い出来事の連続で疲れた僕は、深く考えるのを放棄して一人布団に包まった。
←
04.06.13