pain






「くっ・・・・・・・・」
小指に走った衝撃に、僕は思わずその場にうずくまった。

『ライト どしたんだ?』

背後に居るリュークに答える余裕はなく、机の角でしたたかにぶつけてしまった右足の小指を手で押さえる。
痛みは和らぐどころか、増していく。
運動神経抜群のこの僕が机の角を避けられず痛みに震えるなんて・・・一生の不覚だ。

『お もうリンゴの時間過ぎてるぞ リンゴまだ?』

心配したのも束の間、僕は痛みのあまり声も出せずしゃがみ込んでいるのに、リンゴに目がない死神は急かしてきた。

『なあライト リンゴくれ〜』

そもそも僕が小指を打ち付ける羽目になったのは、リュークのリンゴを一番下の引き出しから取ろうとしたことが原因。

『ライト 無視する気か?今日のリンゴは?』

 じんじん痛む小指とリュークの無神経な態度に、怒りが湧き上がる。

「リンゴリンゴうるさい!リューク・・・・今日はリンゴ抜きだ」
『えっ!?』

僕が一人苦しんでいるのにリンゴに気を取られていたリュークに、罰を下す。
愚かな言動で僕を怒らせた自分を反省し、そして苦しめばいい。リンゴ抜きの状態を。
ようやく小指の痛みが徐々にではあるが、引いていく。

『ライト・・・・その引き出しにリンゴがあるのは分かってる 勝手に取るぞ』
「この中のリンゴは台所に持っていってアップルパイにしてもらう」
『ブホッ!』
「アップルパイなら食べたくても食べられないだろう?」
『リンゴを焼いちゃったのはもはやリンゴじゃない・・・俺は生で丸ごとが好きなんだ!』
「はは グルメ気取りか? とにかくリンゴは諦めろ」
『・・・・ライトが机の角で小指ぶつけて泣いてたって言いふらすぞ』
「僕は泣いてなんかいない!」

痛みで目に涙が浮かんだのは事実だが、あれは生理的な涙であって泣いたうちには入らない。第一、

「リューク 誰に言うつもりだ?レムか他の死神か・・・言いふらされても僕は構わないよ」

死神は、デスノート所有者かデスノートに触れた者でなければ存在自体を感知することが出来ない。
人間に、僕の知っている相手にバレる心配はない。

『Lに匿名で手紙書いていろいろバラすぞ』
「書けばいい 信憑性のない匿名の手紙なんて誰も信じないよ」
『ライトの寝巻きは上下ジャージだってことと・・プレイボーイに見せかけて初恋はまだだってことと・・・実はヅラかぶっ・・』
「ストップ! リューク・・・リンゴはあげるから手紙なんて書くなよ ほら」
『うほっ』

秘密を抱えている僕は、リュークの脅しに屈してしまった。
腹立ちまぎれに足の小指を摘まんだら痛みがぶり返して、僕は飛び上がった。
ついてない。
リンゴを手にしたリュークは、裂けた口を開いて言った。

『ライトって・・・ヅラでかわいそーーー!』

初めて死神を本気で殴ってやりたくなった瞬間だった。


当分リュークとは口をきかない・・・・このヅラにかけて、僕は誓った。










04.09.01   (08.20に月祭りに投稿したものに加筆修正したもの。)