mosquitos
「ライト おかえりなさい」
「ただいま」
「おかえりー わっ お兄ちゃんその首の赤いの何?」
「ああ これは虫刺されだよ」
「もう蚊が飛んでるの?」
「気の早い蚊みたいだ」
「ライト・・・本当にそれ虫刺されなの?」
「はは なに疑ってるのさ 母さん」
「だってあなたガールフレンドが出来たって言ってたでしょう 朝帰りして・・」
「なになにっもしかしてキスマークだったりして!」
「こら 粧裕」
「お兄ちゃんてば隠すことないじゃん」
「勘ぐり過ぎだよ 今日は友達・・と遊んでただけだから」
「ライト 待ちなさい ご飯は?」
「食べてきたからいいよ」
パタン
「ふー・・・・」
『クククッ 苦しい言い訳してたな』
「くそっ流河のヤツいつの間に首に跡付けたんだ!?」
『ライトが寝た後にごそごそしてたぞ』
「リューク お前知ってて今まで黙ってたのか」
『ああ おかげで面白いものが見れた「ホームドラマ 朝帰り編」ってやつだな』
「そんなホームドラマいまどき流行らないよ」
『そうか それにしてもライトの母親のあの驚いた顔・・見物だったぞ ククッ』
「まったく・・教える素振りもせず楽しんでたんだな リュークはゲーム当分禁止だ」
『! 待ってくれライト!!マリオゴルフは俺の少ない娯楽の一つなんだぞ それを禁止なんて・・』
「リンゴとマリオゴルフ どっちを禁止にして欲しい?」
『リンゴは困る!・・だがマリオゴルフもたまにはしたい』
「だったら今後二度と同じことはするな わかったな」
『あ ああ・・・・(俺何もしてないのに・・)』
「約束できるならマリオゴルフ一週間禁止で勘弁してやろう」
『一週間も・・・』
「それから今日一日リンゴ禁止」
『リンゴも!?ライト・・・俺は昨日出かける前にリンゴ食べたきりだぞ リンゴはくれ』
「何か文句でもあるか? それとももっと長い期間にしてあげようか」
『いや・・・一日で十分だ・・・・・・』
ピピピ
「はい」
〔私です〕
「流河!ちょうどよかった 何で僕の首に跡を付けた!?おかげで妹に怪しまれたじゃないかっ」
〔夜神くんが私に付けてくださったのでそのお返しです〕
「無駄な気を回すな! いいか 今度あからさまに見える場所に付けたら承知しないから」
〔承知しないとどうなるんですか?〕
「流河のお菓子を全て取り上げるぞ」
〔それは困ります これからは気をつけますが私には付けてくださって構いません〕
「・・・流河には恥じらいがないのか」
〔夜神くんがくれたモノですから自慢してまわりたいくらいです〕
「僕に跡を付けられたなんて口が裂けても言うんじゃないぞ! じゃ」
ピッ
「流河を嬉しがらせるはずじゃなかったのに・・失敗した」
『喜んでたのか』
「まあね あいつの考えてることはさっぱり分からない」
ぶつぶつ文句を連ねるライトを見て、気持ちを分かってもらえていないLに少しだけ同情したリュークだった。
一方、切られた電話を名残惜しく見やったLは、捜査本部の一室へ移動した。
「竜崎 おはようございます」
「松田さん どうも・・・早いですね」
「いつもギリギリなのでたまには・・あ! 竜崎・・ここ」
「ああ これですか キスマークです」
「えぇっ!? キスって・・一体誰にっ?」
「冗談です 虫に食われた跡です」
「ははは そうですよね」
「驚き過ぎです」
「いや〜まさか竜崎に・・と思って・・す すみません」
「・・・・・・・」
虫刺されを真に受けた松田に内心呆れながらもLはご機嫌だった。
その日捜査本部内でLの首筋に付いている跡について指摘したのは、松田だけだった。
たまに指で跡のある辺りをさすっては微笑むLを目撃した捜査本部のメンバーは、それぞれ複雑な気持ちを抱いて捜査に勤しんだ。
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15.虫刺され
04.07.13