behave like a spoiled child





ライトは甘え方を知らない。
しかし唯一私に甘えてくるときがある。
眠っているときに掛け布団を剥がしておくと、私に擦り寄ってくる。
いつもは睨んでくる瞳も生意気な唇も閉じて、愛くるしい顔で甘えられると
私はライトへの愛しさがいやが上にも高まり、すぐさまその桜色の唇に吸い付き柔らかな耳朶を食み、
すべらかな肌を弄り自分のものにしてしまいたくなる。
その衝動を抑えるのに如何ほどの忍耐が必要か、ライトは知りもせず穏やかな顔で眠っていた。


「流河・・・なんだこのＬノートって」
「どこからそれを！？」
「あれで隠したつもりか？　・・・流河はずっと布団を捲っては僕に寒い思いをさせてたのか？」
「夜神くんが甘えてくる機会が他になくて仕方なく・・・」
「理由にならないな　まったく・・その頬袋がどこまで伸びるか試してみようか」
「暴力反対です」
「よく言うよ　僕に何度暴行を働いたか分かっているのか！？」
「暴行じゃありません　夜神くんだって感じていたじゃないですか」
「・・・とにかく！この気色悪いノートは処分する」
「いけません！私の大切なノートですから返してください」
「届くかな？　はは」
『はは・・・』

ライトは腕を高く掲げてＬの頭上でノートをちらつかせた。
意地の悪い笑みを浮かべたライトの顔はまたたく間に凍りついた。
不意打ちの口付けでライトの動きを止めたＬは背筋を伸ばすとノートを取り返した。
固まっていたライトはＬを押しやると、紅潮した顔で怒鳴った。

「ふざけるなっ　いいか流河！ノートは処分するんだぞ」

言い捨てて脱兎のごとく洗面所へ消えたライト。
後姿を見送ったＬはぼやいた。

「可愛くない・・・・いや　そこがいいのか・・・？」

鬼のいぬ間にノートを隠したＬは、
あのノートはＬとＬｉｇｈｔ（ライト）を掛けていると言い忘れたことに気が付き、ライトの後を追った。
Ｌの説明を冷ややかな目おして聞き終えたライトは、Ｌの頬を摘まんで伸ばした。
予想以上に伸びたＬの間抜けな顔を見て、ライトは軽やかに笑った。
Ｌはライトのこの笑顔をずっと見ていたいと願ったが、果たされることなく夢と散った。

「夜神くん　もう一度笑ってください」
「笑えと言われて笑えるものじゃないよ　流河だっていきなり笑えないだろう？」
「私は出来ます　ほら」

Ｌの作り笑いらしき顔を至近距離で見たライトからは汗が滲み出した。

「流河・・もういい　その凶悪な顔見せるな」
「満面の笑みだったでしょう」
「それは勘違いもいいところだ　人前でやらない方がいい・・・」

普段の無表情に戻ったＬは内心気落ちして、片腕である老人を心の中で詰った。
ワタリの前で笑った顔を見せたときは褒められたのに、ライトには嫌がられてしまった。
Ｌを溺愛するワタリと、変態扱いしているライトとでは立場があまりに違いすぎたが、
恋する少年に拒絶されたＬには理屈など通じない。
無言で部屋に戻ったＬは特等席に座り、立てた膝に顔を項垂れた。

「おいおい流河　拗ねてるのか？」
「・・・・・・・」
「チョコが残ってるから貰うよ」
「・・・どうぞ」

お気に入りのチョコを目の前で食べても了承したＬに呆れたライトは最後の一つを食べた。

「ごちそうさま　おいしかったよ」
「・・・・そうですか」

怒りもせず反応の薄いＬを見て少し心配になったライトは、項垂れたままのＬの頭をそっと撫でた。

「・・・もっと」
「チョコの分はもう撫でて返したから」
「あのチョコだったらひと撫ででは安いです」
「僕が撫でてやったんだから高いくらいだろう」

腕を組んで言い切ったライトは口角を上げて笑った。
ライトにとてもよく似合う笑い方だった。
Ｌはもっと違う笑い方も見たいと望みながら、目の前の自信満々な少年を抱き締めた。

「こらっ　離せ・・！」
「ダメです　帰しませんから」









『あーあ　今夜はリンゴおあずけかー』

リンゴ好きな死神のボヤキは独り言で終わった。

　←


3.甘える
04.06.28