今日から二学期。
教室へ向かう夜神月の隣りには長身の生徒の姿があった。








3年L組 ヅライト先生!! 〜秋、ライバルは留学生・編〜






「今学期から半年間 フランスから留学してきたアイバーくんだ」
「よろしく」

そわそわする女子生徒と関心の薄い男子生徒(リューク含む)。
常時体育座りな男子生徒は、教師の隣りで微笑む留学生を睨みつけている。

「アイバーくんは空いてる席に座ってくれ」
「せっかくなので先生に近い席がいいんですが 留学したてでいろいろ分からないことも多いですから」
「じゃあ竜崎 席代わってやってくれるかい?」
「嫌です 私はここがお気に入りなんです 彼は背が高いので後ろの席が適当だと思います」
「それもそうだな なにかあればすぐに僕に言ってくれ 力になるよ」
「仕方ないですね 分かりました」

うすら笑いを浮かべてLに視線を送ったアイバーは、最後列の席へ座る。
余った空いている席を不審に思った紙村は挙手した。

「先生!葉鳥くんがまだ来てません」
「ああ 実は葉鳥のことなんだが・・しばらく休学するそうだ」

夏休みの間に葉鳥の身に何が起こったのかはだれも知らない。

長い黒髪を結っている奈南川の隣りになったアイバーは、
「艶やかで綺麗な髪だね〜」
毛先に触れて感触を楽しむ。
すぐに叩き落とされて肩を竦めれば、茶髪が眼鏡の向こうから睨んできた。
他意はない、と手をひらひら振るとさらに鋭い視線が刺してくる。

「リューク!リンゴは休憩時間だけだ ガリガリ食べるなら廊下に立たせるぞ」
「え!?・・・朝食を食べ損ねたんで我慢できなくて・・すみません」
「おいしそうなリンゴだね〜」
「だろ?でもこれは俺のリンゴだ あげなねーぞ」

魚類の顔をしたリンゴ好きは、残りの半分をガリガリ食べた。

「後で廊下に立っとくように!」

なかなかに厳しい教師のようだと知った留学生・アイバーは禁止事項を頭の中で整理する。

「先生!アイバーくんへの質問タイムはないんですか?」
「質問があれば朝礼後 本人に聞くように」
「はーい」

自分の好みのタイプではないけれど、留学生と話してみたいミサはチラチラと後ろの席を振り返った。

「では夏休みの課題は日直が集めて職員室まで運んでくれ じゃ」

手短に済ませ、教師はそそくさと教室を後にした。
面白くないのでアイバーが追うと、クマの濃い男子生徒が通せんぼしていた。

「どういうつもりかな?」
「嫌な予感がします・・夜神先生には近付かないでください」
「ちょっと質問するだけだよ それに君に制限する権利はないだろう?」
「彼は私の恋人です 悪い虫は近付かないようにするのも私の役目ですので」
「・・・へ〜恋人ね お手柔らかに」

Lが牽制している間に、件の教師は廊下の向こうに消えた。



それぞれの闘いが、これから始まろうとしていた。




秋編・完。


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