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「おはよう 今日から君達の担任を務る夜神月だ 一年間よろしく」 春うらら、三年Ｌ組はここから始まった。 涼しげな顔でスーツを着こなした薄茶髪の教師は、初めて担任を受け持つことになった生徒たちを 教卓からぐるり見回す。 「誰か先生に質問はあるかい？」 サラサラ艶めく髪をさっとなびかせ、微笑みかけた。 頬を赤に染めた女生徒は、すかさず挙手する。 「ハイ！先生は彼女とかっているんですか？それとも彼氏とか。きゃは」 「僕の恋愛事情を気にする前に自分の進路を心配してくれ 弥 成績が上がれば答えてあげるよ」 「ひっどーい！ミサ卒業したら上京して芸能人になるからいいんだもん」 「・・・卒業できるようにせいぜい頑張ってくれ 他にいるか？」 外見に反して冷たい教師の言葉で、ミサは逆に燃え上がった。 次に、眼鏡を掛けている男子生徒は真っ直ぐに手を上げる。 「先生！奈南川くんの艶やかな髪が気になるんですけどシャンプー何使ってるか聞いてみてください」 「だそうだ 奈南川 三堂に教えてやってくれ」 「シャンプーは使ってません 石鹸です」 「そうか というかそういう質問は本人に聞くように」 石鹸と答えた生徒と、本人に聞けずにいた生徒は少しばかり目を合わせた。 奈南川がそっけなく視線を外した頃合いに、一人の男が手も上げず発言した。 「先生！リュークくんがリンゴ食べてますけどいいんですか？豪快にガリガリ食べてます」 「・・・・その前に何故松田先生が普通に座ってるんですか」 「僕は副担任なので生徒に混じって過ごすことに決めてましたから！気にせず進めてください」 「勝手なことされると迷惑です 先生は後ろに立っててください」 「・・・はい」 立場の弱い松田はすごすごと教室の後ろへ移動した。 「リューク 休み時間以外の飲食は禁止のはずだが」 「３０分に一個リンゴを食べないと授業に集中出来ない体なんです」 「授業中と僕が話している間は我慢しろ 出来ないならリンゴは没収する」 「我慢してると体が捩れたり逆立ちしたりしちゃいます」 「それはウザいな 一番後ろの席のだれか・・葉鳥と席を交代したらどうだ 葉鳥いいか？」 「あ・・はい」 ゴリラ歩きのリュークは溜め息を吐きながら席を立ち葉鳥と入れ替わる。 ある生徒の異変に気付いた夜神月は、注意すべく口を開いた。 「竜崎 当校はパーマは禁止している 休み中にストレートパーマかけただろう 直してこい」 「先生！これはストレートパーマじゃありません ブローで決めて来ただけです」 「髪をいじる暇があるなら睡眠をしっかり取ることだ クマがひどい」 「平気です それより先生の髪の毛に値札が付いてますよ」 「！！ばっばかな！？そんなはずは・・・・」 焦って髪を押さえた教師の行動に、クマ持ち生徒はほくそ笑む。 「隠すより取った方が潔いですよ 先生 彼を見てください ハゲですが堂々とハゲを曝け出してます」 引き合いに出されたハゲは眉を顰める。 「私はハゲという名ではない 尾々井だ それにこれはスキンヘッドという髪型のひとつでお洒落だ」 「そうですか 失礼しました」 「まあ たとえ尾々井は単にハゲているだけだとしても僕は違う！断じてヅラなど被っていない！！」 言い捨てた教師の大声は、教室全体に轟いた。 「これから学校が楽しくなりそうです」 呟いた竜崎とは反対に、気分が重くなったヅライトであった。 春編・完。 アルカロイド内部へ。 |